奇妙な風景は好奇心を刺激する......

見慣れた景色のすぐ傍らで、非日常は静かに息を潜めている。

些細なきっかけひとつで目の前の日常は緩やかに融解し、いつしか街の喧騒と雑踏が遠のくと、光と影の狭間に不穏な気配が漂い始める。

好奇心に駆られて歩みを進めると、夢が現実に滲み出し、互いの世界の境界はいよいよ曖昧に。厭な胸騒ぎに暗い結末さえ望んでいる自分に気がつけば、もう引き返すことはできないだろう。

行く先に現れるのは、恐ろしくも魅惑的で、どこか懐かしく、愛らしさすら感じさせるものたち。心は、その謎めいた引力に否応なく惹きつけられてゆく。

本書はそのようなー日本のどこかにきっとある、奇妙で不思議な場所の記録である。
「奇景」が秘める淡い戦慄を、静穏なる囁きを、脂げな物語を、夏にそっと等し留める。