Vacuum 21
Jun Abe, Ryosuke Koshino, Takuya Suzuki, Kotone Taniguchi, Ryohji Tsuchiya, Shunji Dodo, Yuka Matsushita, Shogo Yamada
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Publisher
Category
Information
- Softcover
- 134 pages
- 79 images
- 220 × 280 mm
- Limited edition of 90 copies
- Japanese
- 2026
エロス(生の欲動)とタナトス(死の欲動)の関係には諸説あり、タナトスとの闘いによってエロスが輝くという対立型から、同じものの表と裏であるという二重化説、極端なものでは、両者は、ほぼ同じ(≒)ものであるという意見まで様々だが、すべてに共通しているのは、このふたつが人間の生(生と死)にとって切っても切れない関係にあることだ。
エロスとタナトスは、精神分析の概念なので、人間の心の内部を問題にしているが、外部の世界に目を向けてみると、「生成」と「分解(破壊)」という、エロス、タナトスによく似た対概念(現象)がある。
すべてのものは、秩序がなくなる方向にしか動かない、というエントロピー増大の法則は、生物にも及んでいて、常に細胞は「分解(破壊)」されていく。
しかし、生物だけが、とても特殊な方法でこのエントロピー増大の法則に逆らっている。
その法則に従って細胞が「分解」される前に、自ら細胞を「分解」し、新たに「生成」することによって、エントロピー増大の法則を出し抜いているのである。
これは、生物の生命現象であるが、肉体で起きることは、心でも起きると考えれば、「生成」=エロス、「分解」=タナトスとなる。
生の欲動(本能)があれば、死の欲動(本能)などいらない、なんのためにそれはあるのだろう、という疑問の答えは、上のようなメカニズムが働いていれば、納得できないだろうか。
もしタナトスがなければ、新たなエロスは、生み出されない。
「分解(破壊)」がなければ、新たな「生成」もない。
エントロピー増大の法則への生物(人間)の反抗も永遠に続くわけではなく、いずれは、粒子に「分解」されて、宇宙の塵となり、次の生命体や物質の材料となる。
タナトスとは、自分の身を、次に続く存在の一部(材料)にしたいという欲動(本能)かもしれない。
エロスは、その時、その塵を集めて、新たなものを、永遠に生み続けるだろう。
― 阿部淳(2025年8月10日)
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